ランニング中の水分補給には糖質を含んだものがいいのか?
2018.2.7(Wed)
こんばんは。
今回は、上記のタイトル内容についてお話します。
先に結論から申し上げますと、運動時には糖質を含むドリンクを摂取したほうが、水のみを摂取したときよりも疲労困憊を遅らせることができることが明らかとなっています(1, 2)。
糖質がエネルギー源として利用される結果であると考えられているのですが、糖質濃度は胃の通過速度と腸管からの水分の吸収速度に影響を及ぼすことも知られています。
糖質の濃度が高くなると水分の吸収を妨げ、甘さが増すことによりドリンクとしての飲みやすさも損なわれます。
腸管からの水分の吸収は糖分を2.5~8%含んでいるものが速く、糖分濃度が8%以上になると吸収速度は遅くなります(3)。
したがって、一般に糖質が10%前後含まれているソフトドリンクでは、運動中の水分補給には適していないことになります。
一般に市販されているスポーツドリンクでは、水分の吸収が速やかに行われる糖分濃度である3~6%前後に調整されているものが多いです。
しかし、6%の糖分濃度のスポーツドリンクのペットボトル1本(500ml)には、30gもの糖分が含まれています(500×6÷100=30)。
これはアスリートを含む身体活動量の多い人たちにおける多量の発汗時の水分およびエネルギーの補給を目的としているためであり、身体活動量が少ない人たちが健康イメージで多量に摂取すれば、エネルギー過剰となることもあるので、注意が必要です。
最近では人口甘味料などを使用してエネルギー含量を低く抑えたカロリーオフのスポーツドリンクなども多く発売されています。一般の人たちがこれらを利用するのはエネルギー過剰を避けるために適していると考えられますが、アスリートにとってスポーツ時のエネルギー補給という観点からみれば、その効果は見込めないことになるため、運動強度や運動時間、環境条件等によって、補給するドリンクの内容を使い分けるのが好ましいと考えられます。
まず、水分の補給を優先させるか、エネルギー補給が必要かを考えなければなりません。
暑い日に試合やトレーニングを行う場合、あるいは湿度の高い室内で行う場合などには水分補給を優先させ、糖質濃度を少し薄めにした飲みやすいドリンクを選択するほうが懸命だと思われます。
冬季スポーツや比較的軽めの運動を長時間、涼しい日に行う場合には、発汗による水分損失は少ないと考えられるため、エネルギー補給ができるよう糖質量がやや多めのドリンクにするとよいでしょう。
試合前、試合後あるいは試合の合間などには、水分と糖分の両方の補給を行う必要があるため、糖質6%程度のスポーツドリンクが勧められます。また、発汗量の少ない冬場や運動時間がさほど長くない場合は、水かお茶でもよいとおもいます。
今回はこれで以上になります。
これからはランニング中に飲むドリンクの糖濃度についても意識してみてくださいね。
参考文献
1)Costill, D, et al. : Nutrition for endurance sports:
carbohydrate and fluid balance. Int. J. Sports Med., 1 :2-14, 1980
2)Millard-Stafford, M. et al.: Water versus carbohydrateelectrolyte ingestion before and during a 15-km run in the heat. Int. J. Sport Nutr, 7 : 26-38, 1997
3)Coyle, E, et al.: Benefits of fluid replacement with carbohydrate during exercise.
Med. Sci. Sports Exerc, 24 : S324-330, 1992